ウーパールーパーの感想文

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スペードの3 朝井リョウ 感想 背景無き人の無常

心がヒリヒリする

醜い心をリアルに表現

 

 

あらすじ(Amazonより引用)

 

ミュージカル女優、つかさのファンクラブ「ファミリア」を束ねている美知代。大手化粧品会社で働いていると周りには言っているものの、実際は関連会社の事務に過ぎない彼女が優越感を覚えられるのは、ファンクラブの仕事でだけ。ある日、美知代の小学校時代のクラスメイトが「ファミリア」に加盟する。あっという間に注目を集めた彼女の登場によって、美知代の立場は危うくなっていく。美知代を脅かす彼女には、ある目的があった。 華やかなつかさに憧れを抱く、地味で冴えないむつ美。かつて夢組のスターとして人気を誇っていたが、最近は仕事のオファーが減る一方のつかさ。それぞれに不満を抱えた三人の人生が交差し、動き出す。 待っているだけではなにも変わらない。私の人生は私だけのもの。直木賞作家朝井リョウが、初めて社会人を主人公に描く野心作!

 

 

感想

 

人の弱さを真っすぐに逃げずに描いた本作。

ドロドロした感情を痛いくらいに表現してある。

「嫉妬」という感情。

誰しもが何かしらの劣等感を抱いて生きている。

そして、それを隠して、守ろうとする。

例え誰かを見下したり、誰かを陥れてでも。

誰だって、学生時代に女子同士の不思議な世界を見ていただろう。

ある日、突然、誰かが1人になったり、泣いていたり。

そんな女の世界を限りなくリアルに、繊細に、黒く表現した朝井リョウという観察眼には脱帽する。

 

そして、「人のため」という理由。

これは本当なのであろうか。

「自分のため」が無意識に優先されていて、「人のため」というのは、後付けされた理由なのではないのか。

それぞれ自分の価値観、プライド、所属する組織やグループ。

そこを守るために、自分のために動いたことが、人のためになる。

それが間違いだとは思わない。

色んな人の交錯する心を、自分は見たり見ないふりをしながら生きている。

空気を読み合って、お互い傷つけないようにして、自分も傷つかないように生きている。

思うことは、人間ってちっぽけで、自分もちっぽけなんだ。

自分の弱さから目をそらしたいから、他人を守ったり、攻撃したりする。

そんな醜い部分に目を向けさせられる。

 

小さなころから一緒に歩んできた「自分の心」。

体は大きくなっても「自分の心」ってそんなに変わってない。

窮屈なこの世界から脱したいけれどもそんな上手くはいかない。

そんな自分の心と周囲の人間の心を見事に描いた本作。

醜くても、弱くても、何も持っていなくても生きて行かなければならない。

苦しくても前を向こうとする。

上手くいかない現実を丁寧に描かれている。

是非、一読を。

 

 

名言

 

社会の歯車、というあまりによく使われている言葉を、全く違う方法で、鮮やかに、いやらしくなく表現しているものが名刺だ。

 

容姿に恵まれていない、純粋なだけが取り柄のような弱気な人物が、怯えながらも仲間を増やし顔を上げて立ち向かうだなんて、まるでその中に真実があるみたいだ。

 

手書きのたった五文字の向こう側に広がる想像は、文字にすると何千字、何万字にもなる。

 

その人の背景や、余白や、物語は、それ以上のものにはなり得ない。

 

 

スペードの3

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スペードの3

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